無理して笑うな
〈唯said〉
あたしは頭を抱えて座り込んだ。
ステージ裏ではスタッフ達が大慌てで飛び回っている。
まだステージでは蓮達があたしの留守を切り盛りしてくれていた。
どうして
どうして
悠斗…
悠斗は女の子といた。
それもとびっきり可愛い子
「彼女、できたんだね…」
なんでこんなに胸が痛いんだろう
なんでこんなに寂しいんだろう
あたしは久しぶりに泣いた
6年前泣かないと誓ったのに
誰かが近づいてきてあたしの肩をゆすった。
「唯、唯!」
あたしは涙をふいて顔を上げた。
そこには心配そうにあたしを覗き込むビルがいる。
「唯、ダイジョウブカナ?どうしたのかな?」
ビルの顔を見て、あたしの顔は無意識に笑顔を作る。
「大丈夫です。ちょっと貧血で…。すぐ戻るね。」
「唯。」
ビルの静かな声にあたしは振り向いた。
「はい?」
「コンサートが終わったら、メンバーのみんなにタヨルンダヨ。
きっと助けてくれる。
Do you understand?」
あたしはビルの顔を見て、首を傾げた。
「ビル、あたしは本当に大丈夫だよ。」
「大丈夫じゃなさそうだから言ってるの。」
ビルの下手くそな日本語でもあたしのことを何より心配してくれているのは分かった。
「本当に大丈夫です。あたし、戻りますね。」
ビルがため息をついたのが分かったが、あたしは気にせずステージの脇にある3段ほどの階段の前に立った。
蓮がこちらに気づいたようであたしが入りやすいように間を作ってくれている。
あたしは涙を拭うと仲間の元へ戻るために階段を駆け上った。