無理して笑うな
〈悠斗said〉
「ちょっと待っててね!」
由奈がそう言ってトイレに行っている間、俺はただぼーっと突っ立っていた。
昼の休憩が終わってから、コンサートはもっと熱くなったと思う。
5人が客席に下りてくるサプライズもあって客席は叫び声ならぬ歓声で大いに盛り上がった。
唯は2階席だったみたいで俺達には見えなかった。
コンサートが終わった後の握手&サイン会のときも俺はぼーっと待っていた。
いろんな女が声をかけてきてきゃっきゃ言ってるけど、無視する。
「ねー、君かっこいいね。
コンサートも終わったんだしあたし達と遊ばない?」
俺はまた無視する。
「無視しないで〜。そうだ、これからBlueSkyの楽屋に行くんだけど、来る?」
俺はその言葉につい反応してしまった。
しかし、そんなことは出来ないと思い直してため息をつく。
「出来もしないくせに。」
俺がそう言うと女達は舌打ちをした。
「もう!いいわよ!」
自分から勝手に来たくせに勝手に怒ってやがる。
俺がまたため息をついたとき、後ろから誰かに肩を叩かれた。
俺が振り向くと帽子を目深にかぶった人がいる。
ここは室内だし明らか不自然だ。
「悠斗、ちょっと来いよ。」
俺はその声に覚えがあった。
「…蓮?」
その人は頷いた。
「早く。またさっきみたいな人達に捕まったら俺の命ない。」
あー
それは妙に説得力のある言葉だ。
「ご愁傷様です…」
でも俺は由奈に待っていると言った。
「俺、一緒に来た子待ってないと。」