無理して笑うな

蓮がピクッと動いたのが分かった。




「…その子のことで、話があるんだよ。」




「由奈が何かしたのかよ?」




俺は不思議に思って首を傾げる。



蓮がため息をつく。



その表情は帽子に隠れていて見えない。




「由奈っていう子か。名字は?」




「?中井だけど…」




蓮は携帯を取りだすと誰かに電話をかけ始めた。




「あ、栗田さん?唯のことなんだけどさ、お相手の女の子中井 由奈ちゃんだって。

…うん、よろしくお願いします。はーい」




そう言って電話を切った蓮を見ている俺の目は、きっとまん丸だろう。




「唯のこと…?唯と由奈がどんな関係だって…」




「まー、話せば分かる。」




蓮がそう言ったとき、会場内にアナウンスが響き渡った。




『中井 由奈様、中井 由奈様。

まだ会場内にいらっしゃいましたら受付けの方におこし下さいますよう、ご協力をお願いいたします。』




「一緒に来てくれないかな。唯のことなんだけど。」




もちろん、蓮について行かない理由はない。



でも、今さら俺と唯にどんな関係があるのか分からない。



前話をしようと持ちかけてもあっさり断られてしまった。




蓮は俺が頷いたのを見て早足で歩き始める。



蓮は何も言わず、『関係者以外立ち入り禁止』と書かれた貼り紙の横を通りすぎて舞台裏にある部屋に入った。




ドアには『BlueSky様』と書かれた紙がはられていたのできっと楽屋か控え室だろう。




普通の人なら芸能人の控え室に入れれば(しかもBlueSky)嫌でもそわそわしたりするだろうが、今の俺は唯のことで頭がいっぱいだった。




中に唯はいなかったが、さっきステージに立っていた橘 達也と水野 亜依がいる。




「君が悠斗君か〜」





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