グレープフルーツを食べなさい
 ―――打ちのめされていた。

 普段の女性らしい気遣いや優しさを見せる麻倉さんともまた違い、仕事中の彼女は凛としていて、誰が相手だろうと怯まない。

 その場のみんなが、彼女に信頼を寄せているのがよくわかった。もちろん、上村も。

 私だって、自分なりに一生懸命仕事をしてきたつもりだけれど、今の私じゃ到底麻倉さんには敵わない。上村が、彼女を選ぶのは当然だ。私にはきっと、太刀打ちできない……。

 私は、自分の気持ちにきちんと区切りをつけるべきなのかもしれない。会議室から漏れ聞こえる声を聞きながら、そんなふうに思い始めていた。

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