梅花の軌跡
「…い」
「ん…?お母さん?あと10分~」
「誰がお母さんだ!」
朝練に行かせるために起こしに来たお母さんの声…のはずなんだけど。こんなに低かったっけ?
「あ…れ…?」
ぼやけて見えるシルエットはお母さんじゃない。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
私の悲鳴が試衛館に響き渡るのと同時に勢いよく起き上がる。そしてゴツンと鈍く大きい音がした。
「いったぁ…」
「いってぇ…」
悶絶する2人。前にもこんなことがあった気がする。
痛みが和らいでもズキズキと頭に響く。
「何回頭ぶつければ気が済むんだよ!!」
怒鳴るのはおでこをさすっている土方さん。土方さん…?
「あっ!!!」
そうだった。私時渡りして江戸に飛ばされたんだった。やっと覚醒して昨日の出来事を思い出した。
「まったく朝から騒がしいやつだな…」
土方さんは呆れたように言う。
「朝餉の用意ができている。みんなにも小梅を紹介しなきゃいけないからさっさと来い。」
淡々と話してふすまに行く土方さん。その後ろ姿を慌てて追いかけた。
しばらく歩くと広めの部屋のふすまの前に立つ。
土方さんはちらりと私を見て、勢いよくふすまを開けた。