Wonderful DaysⅢ【berry’s cafeバージョン】
暗躍
◇
綾が校内を走り回って、マリアを探していたのと同時刻───
賑やかな繁華街の外れに建った雑居ビルの一角に、その店はあった。
狭い入り口は、地下へと続く長い階段の先。
薄暗い店内には大音量の音が響き、ミラーボールに反射したカラフルなライトの下では男女が楽しげに踊っていた。
「もう! クロってば、やっと出た」
それを横目に、カウンターテーブルに頬杖をついてスマホを耳に当てていた女はやっと繋がった相手に口を尖らせる。
『……今回は、何の依頼?』
「今日は、依頼の電話じゃないわ」
『依頼以外の電話はするなと伝えてあったはずだけど』
女の言葉が気に障ったのか、不機嫌さを隠さない男の声は低い。
「悪かったわよ。でも、どうしてもクロにお礼が言いたくて」
『お礼って、何の?』
訝しげに尋ねられた問いに
「あんたの情報のおかげで、やっと欲しいモノが手に入ったの」
女は満足気に真紅の口の端を上げた。