サヨナラなんて言わせない
「気分はどうですか?まだ熱が高いからぼーっとするでしょう?」

落ち着かない心臓にブレーキをかけながら枕元へ来ると、額に置かれたタオルを取り替えていく。そんな俺の姿を涼子は赤い顔でぼーっと見つめていた。

まだまだ熱は下がりそうにない。

「飲み物飲めますか?もし何か口にできるなら少しでもいいから入れた方がいいです。ちょっと持ってきますね」

そう言って立ち上がった俺の体がくんっと後ろに引っ張られる。
何が起こったかわからず視線で辿ると、細くて綺麗な彼女の指が俺の服の裾を掴んでいた。
一瞬驚いたがそれはすぐさま喜びへと変わる。

「どうしましたか?」

笑顔で彼女の顔を覗き込むと、ゆらゆらと潤んだ瞳に俺の姿が映し出される。
吸い込まれそうな錯覚を覚えた時、やっと聞こえるほどの声で彼女が言った。

「・・・・・・・で」

「え?」

「・・・・行かないで・・・」

絞り出すように発せられた言葉にハッとする。
見れば今にも泣きそうな顔で俺を見つめていた。

「お願い、どこにも行かないで・・・・」
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