サヨナラなんて言わせない
ベッドの淵から手を踏み外した彼女の体を掴むと、自分の方へ引き寄せようとする。

「きゃあっ!!!」

「涼子さんっ!わっ!」

ドサドサッ

が、タイミングが少し遅かったせいでそのまま落ちてしまった。
彼女だけは守らなければと、なんとか自分が受け身を取ることだけはできた。
危なかった・・・・

「痛・・・」

痛い?!どこかぶつけたのだろうか?

「涼子さん、大丈夫ですか?」

「え?・・・・っ!」

あらためて目の前にいるのが俺だと理解した彼女の目が見開かれていく。

「どこもぶつけてませんか?」

色々と話さなければならないことはあるが、まずは彼女の無事を確認してからだ。

「な、な、な、な・・・・・?!」

だが彼女はパニックの余り意味不明な言葉を発するだけ。
その様子を見る限りどこもぶつけたりはしていなさそうだとほっとする。

「つ、司・・・・?なんで・・・」

ドキン・・・

意識のはっきりした彼女の口から零れた名前に胸が高鳴る。
おそらく彼女は無意識に口にしたに違いない。
たとえそうだとしても嬉しい。
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