サヨナラなんて言わせない
混乱している彼女を落ち着かせるように微笑んだ。

「驚かせてしまってすみません。涼子さんが出掛けた日、熱があったのが気になって心配で・・・ずっと待ってたんです。そしたら涼子さん帰ってくるなり倒れてしまって。40度近くあって大変だったんですよ。覚えてませんか?」

俺の言葉に彼女は驚きを隠せない。
あの日俺を避けて家を出た上に帰らないと宣言していたにもかかわらず、気が付けば俺と同じベッドで寝ていたなんて、状況がすぐに理解できなくて当然だ。

「今もまだ熱が下がりきってないんですよ」

そう言われて自分の額に手を充てている。
どうやらそれらが本当のことだと徐々に自覚しているようだ。

「でもなんでここに・・・?」

怪訝そうな顔で俺を見上げる彼女にどう言えばいいものかと考える。
でも変に繕うより本当のことを言った方がいいだろう。

「その、夜中にタオルを替えに来たら涼子さんが僕の服を掴んで離さなくなって・・・そのまま横にいたんですけど、僕も段々睡魔に負けてしまって。申し訳ないなと思いつつベッドに寄りかかるようにして眠らせてもらったんですけど・・・・・そうしたら・・・」

一旦言葉を切った俺の様子に彼女が息を呑むのがわかった。

「そうしたら・・・・・・?」

知りたくないけど知りたい、そんな彼女の気持ちが手に取るように伝わってくる。
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