サヨナラなんて言わせない
「一体何があったのよ?!」

あれからすぐに隣の個室へ移動すると、間髪入れずにカナは聞いてきた。
俺の顔を見れば尋常じゃない様子なのは一発だ。

「・・・・・涼子にばれたんだ」

「え?」

「あの日、涼子の部屋に帰る前に岡田と偶然会って話したんだ。俺がとっくに記憶が戻ってるってわかるような会話をして・・・・おそらくそれを涼子が聞いていた」

「・・・でも元々話す予定だったんでしょう?」

「そうだ。でも問題はそこじゃない。・・・・会話の最後にカナ、お前が出てくるんだ」

「・・・・え?」

カナは一瞬何のことかわからないといった表情を見せる。
だがすぐに何かに気付いたように目を見開いた。

「・・・・そう。涼子はお前のことをそういう相手だと思い込んだままなんだ。その上でお前の存在を聞かされた。・・・・だから彼女が帰ってきたときにはもう・・・・何一つ聞いてもらうことはできなかった」

「そんな・・・」

カナの顔までもがどんどん青ざめていく。
どちらも血の気がなくなったんじゃないかというくらい生気のない顔をしていた。
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