サヨナラなんて言わせない
「まずはご予算を設定していただきます。その中でいかに内藤さんのご希望に添えるものがつくれるか、そこからは私たちの腕の見せ所になります。できるだけお客様の夢を叶えられるよう最大限のことはさせてもらいます。ですから要望はどんどん出してください。お客様のアイデアが思わぬ形を生むことだってよくあるんです」

「そうなんですか?」

「はい。私たちプロはつい固定観念に捉えられがちですから。まずは価格のことは意識せず、作り上げたい理想の形をどんどん上げていってください。具体的なことはそこから考えましょう」

「・・・・はい・・・!」

ご夫婦の顔がぱっと希望に満ちていく。

終の棲家。それは誰にとっても一生で一番大切な買い物だ。
たとえ小さくとも、予算があまりなくとも、その中で満足してもらえるものを作っていく。それが俺たちの仕事。予算がないからって諦めることは簡単だが、俺はそう簡単に諦めたりはしない。
お金があればいくらでも理想的な家を作ることはできる。でもそんなことができる人間はほんの一握りしかいない。どんな人だって理想の家を建てたいという夢はある。
俺はその夢を叶えるための手助けができる建築家でありたいと思ってる。

愛する誰かと安らげる空間を作り上げること、それが俺の礎部分だ。



それから2時間、依頼主のご夫婦と具体的な案をみっちりと話し合っていった。
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