サヨナラなんて言わせない
「何見てんだよ、クソガキっ!」

ガツッ!ドサッ


時には、俺の姿に腹を立てて殴りかかってくる男までいた。
当の母はその行為にすっかり陶酔しきっているのか、俺がされていることなんてまるで見えてはいなかった。そして酔いが覚めて翌朝になるとアザを作った俺の姿に驚く。
そんな滑稽なやりとりがそれからも何度も繰り返されていった。


「そのアザ・・・・またやられたの?」

俺の腕を見て心配そうに口を開く。

「・・・もう慣れたよ。あと3年。高校を卒業するまでの我慢だ。そうしたら俺は家を出て自由の身になれる」

「司の家も色々大変だね・・・・」

そんなことを呟いたのは俺の幼なじみの長谷川奏多。
小学生の頃からの腐れ縁だ。
奏多の家も少し事情を抱えていて、再婚でできた継母とうまくいっていないらしい。
年々その溝は深まるばかりのようで、家に居場所がないんだと嘆いていた。
互いの家庭の悩みを打ち明けてからというもの、俺たちの距離はぐっと近付いていった。
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