サヨナラなんて言わせない
「・・・・・そっか。なるほど、涼子は俺に朝まで頑張ってほしいわけだ」

聞き捨てならない台詞に顔を上げた涼子はブンブン必死で首を振る。

「ち、違うっ!!そういう意味じゃなくていつも司がっ・・・」

「そうかそうか、そんなに期待されてるのか。その期待を裏切らないようにいつも以上に頑張らないと男じゃないよな」

「ね、ねぇ!だから違うって・・・・」

俺の腕にしがみついて必死で誤解を解こうと頑張る彼女の耳に唇を寄せてそっと囁いた。

「なんなら今日から子作りしちゃう?」

次の瞬間ボンッ!!と音を立てて全身が真っ赤に染まる。
期待以上の姿に吹き出しそうになるのを必死で堪える。

「な、な、なっ・・・・・??!」

囁かれた耳を押さえて爆発しそうなほど真っ赤な顔は、まるで金魚のように口をパクパクさせることしかできない。俺はそんな彼女にニッコリ笑うと、ソファに落ちているカタログを拾って硬直する彼女を引き寄せ覗き込んだ。

「そうと決まれば早く選ばないとな。よーし、俺頑張らないと」




「えっ、えっ、えぇ~~~っっ?!」





涼子の悲痛な雄叫びと、俺の大笑いする声がマンションの廊下まで響き渡っていたのを知ったのは、もう少し先の話。
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