サヨナラなんて言わせない
「涼子・・・・・」

長い長い抱擁を終えると、彼女の体をそっと離して今度は顔を近づけていく。真っ赤に熟れたその唇まであと数センチ・・・・


ムギュッ


「・・・・・・・・・・ん?」

いつもとどこか違う感触に閉じていた目を開ける。
俺の唇に触れているのは愛しい彼女の唇・・・・ではなく手のひらだった。
待ったの形で俺の侵入を阻んでいる。

「・・・・・・おい?」

今この状況でそういう流れにならないのはあり得ないだろう?!
不機嫌そうな俺の様子に、涙で真っ赤な目をしながらも涼子はアハハと笑って誤魔化している。

「今はまだ駄目だよ?今日はとにかくローテ-ブルを決めなきゃいけないって言ってたでしょ?もう時間がないんだから」

「・・・・・そんなのは後でもできるだろ?」

「できないから今やろうって言ってるの!!」

「・・・・・なんでできないの」

「そっ、それは・・・!だ、だって、司は一度そうなったら・・・・もう朝まで・・・・・・」

そこから先はゴニョゴニョ聞き取れない言葉を繰り返すだけ。
さっきとは意味の違う赤に染まる彼女に悪戯心にまた火がつく。
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