失 楽 園
「……いつ、彼と会ったの?」
彼、とは眞鍋さんのことだろう。
ぎり、と骨が悲鳴をあげるくらいに
きつく、両肩を掴まれた。
「きょ、恭ちゃん……?」
「いつ会ったの。
僕、そんなこと聞いてない。いつ?」
男は怒っていた。
肌を指すような殺気を感じる。
私は暗闇の中手を探り、
男のシャツを握った。
「あ……か、馨、ちゃんと……
お買い物、行った時、に……」
痛いくらいの殺気に、
呼吸することすら戸惑われる。
馨、とは眞鍋さんの奥さんだ。
目が見えないせいも有り、
引きこもりがちの私を
積極的に外に連れ出してくれる
優しい女性である。
私が喘ぎ喘ぎ答えると、
重くなった部屋の空気が
すっと軽くなった。