誇り高き

芹沢鴨


杯に映る小さな月。

風に吹かれ、ゆらゆらと揺れる其れは己の心の迷いを表しているようだ。

「儂はどうすればいい?」

『貴方は貴方の思うまま進めばいい』

蘇る声が心を掻き乱す。

やめろやめろやめろ。

耳を塞いでも、声は蘇ってくる。

『貴方は筆頭局長なのですから』

『隊のために鬼になるのでしょう』

ぱんっと頭の中で何かが弾けた。

「はっはっはっはっはっ。そうか……そうか……っ。儂はっ、儂は______」

芹沢は狂ったように笑い出す。

「………_______だ」

芹沢の呟きは、深く怪しい京の闇に飲み込まれていった。









「……_______なんで脆い、愚かな鬼」

屋根の上で呟いた人影。

「時は満ちた。______いざ、鬼退治へ」


その人影は身を翻すと闇に消えた。






< 45 / 211 >

この作品をシェア

pagetop