誇り高き
その日、近藤と土方の元に一通の手紙が届いた。

送り主は会津候松平容保。

その内容に、土方のみならず近藤の額にも深い皺が寄せられている。


‘‘筆頭局長芹沢鴨を早急に始末せよ”

最近の芹沢は目に余る行動が多い。

先日も角屋で大暴れをしたばかりなのだ。

会津も遂に耐えかねたのだろう。

早急に始末_____即ち暗殺。

しかし、如何に目に余ると言っても芹沢は壬生浪士組結成からの仲間。

殺すのには躊躇いがあった。

「どうする……近藤さん」

「どうするって……歳…」

「迷ってる暇はねぇ。やるしかねぇよ。容保様からの命令だ…」

壬生浪士組は会津御預かりと言う立場。

上司の命令には逆らえない。

「………っ。わかった。せめて、俺たちの手で送ろう」

「……副長」

その時、屋根から声がした。

「山崎か。どうした?」

「芹沢がまた問題を起こしはりました」

「「何っ?!」

「沖田隊長と永倉隊長と紅河が場を収めたから、大事にはなってはりません」

「……そうか」

もう、残された道は芹沢を殺す事しか無かった。

「山崎、もう良い。下がれ…」

「はっ」

「歳……」

近藤は顔を歪めた。

殺したくない。

土方がそう胸の中で呟いた時、甘い甘いと言う芹沢の声が聞こえた。

『お前も優し過ぎる。鬼には向いてねぇな』

______俺は鬼になってかっちゃんを武士にするって決めたんだ。

武士を夢見て、江戸からここまでやって来た。

その時に決めたのだ。

自分は鬼になって、近藤を支えるのだと。

そのために、俺は副長になって鬼と呼ばれ嫌われ役もやって来たのだ。

全ては、近藤を武士にするために。



俺達はまだ武士になってねぇ。

始まったばかりだ。

こんな所で止まっている場合じゃねぇ。

そのために、邪魔は排除する。

例え仲間であろうとも。



この瞬間、土方は完全な鬼と化していた。

仲間の命を殺すことさえ躊躇わない冷酷な感情。




____まずは芹沢の右腕、新見錦を潰す。






芹沢の死は刻一刻と迫っていた。














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