† トータル †
第3章~涙を流さない、夢~

サヨナラ










☆織子side☆




・・・今でも覚えている。




「オリちゃん」



そう呼んでくれた兄の存在を。

名は確か・・・トモヤと言ったか。

よくは・・・覚えていない。




暫くして、ボクは兄と父と別れた。

着いたのは、小さいアパート。

古びていて・・・隣の部屋の声が聞こえるほど、壁は薄い。




母親、と呼べる人物は、常に遅く帰宅した。

そして、必ず泣いていた。



ボクはお母さんがいない昼間を、ずっとパソコンをいじって遊んだ。



昔、お母さんはボクにパソコンを与えてくれた。

お母さんと一緒に家を出た時、お母さんが持って行ったものだ。

ボクは次第に使い方を覚え、ハッキングまで出来るよう使えるようになった。


イオが生まれたのは、この時。

イオは瞬く間に名を世界にまで轟かせていた。

天才ハッカー、として・・・。




ボクはふと思う。

お母さんと、まだこのアパートに着く前、夜の街を歩いていた時、出会った女の子の存在を。






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