† トータル †
少女は、ボクがイオと名乗ると、ハッカーであることを知っていた。
ボクはその時、ひどく驚いた。
こんな小さな子でも、知っているんだ・・・って。
「オリちゃーん」
遠くで、お母さんの声がする。
ボクはその方向を見た。
お母さんは手に、黒い袋を持っていた。
・・・またか。
またお母さん、万引きしたんだ。
お母さんは家を出てから、生きるため万引きを繰り返した。
その時役に立つのが、あの黒い袋らしい。
「行かないの?」
その少女はボクに聞いた。
ボクは行きたくない、と答えそうになった。
それをグッと抑え、少女から離れる。
少女のあの不思議そうな顔が、頭から離れなかった。
「ただいま・・・」
お母さんの声で、ボクは現実へ戻る。