神様の憂鬱
「あの日、彼は落ち込んで帰ってきました」

目を閉じたままで彼女が話す。

きっと、過去の日を見ているのだろう。

ボクは彼女の言葉に耳を傾けた。

「なにがあったのだろう? そう思って、わたしは訊ねました。

すると彼はこう言いました。

仕事をクビになったと。

これから、どうしようと落ち込んでいました。

わたしは、そんな彼を責めてしまったのです」

彼女の瞼がぴくぴくと痙攣する。

「ちょうど結婚の日取りも決まりはじめていて、なにもかも上手く進んでいて、

わたしは幸せの絶頂にいました。

それなのに、急に職をなくしたと聞かされて、あの人をひどく責めてしまったのです」

瞳が、ゆっくりと現れた。

濡れたその目には、深い悲しみが宿っていた。

毎晩彼女が見せていたあの瞳だ。

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