神様の憂鬱
「ちょっと」

紗良奈が焦ったように呟きながら駆け寄って両腕を突き出した。

受け止めるつもり?

そんな細い腕で。

ひょいっとその腕を避けるように、離れたところに着地。

なんでもないように紗良奈を見た。

彼女は呆けたように僕を見つめ、

「危ないじゃない!」

と声を張り上げた。

「平気だよ、ぜんぜん」

「ほんとうに?」

「うん、ほんと。ほらっ」

彼女は疑りぶかそうにしばらくボクを眺め、

「怪我してない?」

「してないよ」

「そう、ならいいけど」

小さな声で呟いた。
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