恋愛応援部

2

それはこの学校で使う教科書であった。
「あ、返せ!」
階段から慌てて降りてきて俺の手から教科書を奪い取る。
その人は俺のよく知る人物であった。無愛想な喋り方に寝ぐせ。
遠藤 彗華、の元彼であった。
そんなこともあり俺達は前より言葉を交わすことが少なくなった。
「わ、悪かったな……それじゃ……」
階段を横切る止めることのできない気持ちを必死に抑えるのがつらかった。
痛みは心を広がり行動へと移る、その前に俺は必死に痛みを我慢した。
本当は、本当は今でも一緒にいるはずだったのではないだろうか。
本当は、本当は……づっと気持の整理なんてついてなくて、づっと心は同じまま。
何でもっと1日1日を過ごさなかったのかと後悔した。
でもそれはもう取り戻せないのだと俺は今まで生きてきて学んだ。
なのに、本当に辛いのはその事実を受け入れることだ。
階段は横の小さな鏡に移される顔は、とても楽しげなかおだとは思えなかった。
自分でそう思うんだ。きっと皆……。

叶えることのできない恋をどうしたら忘れることができるのだろう?
俺はそれを追い求めていたんだ。
づっと、答えの見つからないナゾナゾに挑戦しつづけていたんだ。


「柳ー」
俺を後ろで呼ぶ声、それは日崎のものであった。
行きなり怒って出て行ったから心配したのだろう、それか勘月が怒って部屋から追い出したってところか……そんな事を考えながら俺は振り向いた。
「柳やめるなよ……だって、みんなで……誓ったことだろう……?」
俺の前まで走って追いかけてきたのか息は荒くとぎれとぎれに日崎はそう言った。


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