第二章 高岡シンジ
第二章 高岡シンジ

「シンジ今何時だ?」
「7時だ」
「お前門限とかあるか?」
「別に……あったら幸せなもんだな」
「は?門限とかいらねぇだろ」
エイスケは男子高校生なら当然のことを言った。
「まぁな……今の俺には門限どころかなんもねぇんだ」
「……話せよ。今度はシンジの番だぞ」
「あぁ」
俺は少し息を吸って話始めた。


俺が病院に来たのはなにも泣くためじゃない。
両親に会うためだった。
来たくも無かったが、確認のためだと警察は言う。
真っ暗な死体安置室の中で、布をかけられただけの誰かもわからないような真っ黒な死体。
俺にはわかった。
見たことある身長の二人はまさに俺の両親だった。
同じ結婚指輪をつけた指がおもむろに俺に語りかけてくるような気もした。
俺は辛すぎて直視出来なかった。
冷たくなって、酷い火傷を負った二人の肌に触れたとき、じわじわと涙が溢れた。
「父さん!母さん!」
俺は何度も叫び続けた。もう一度だけでいいから名前を呼んで、笑って欲しくて。
「なんでだよ!!行かないでくれよ!!俺まだなんも恩返しできてねぇよ!!まだ教えてもらってないことばっかだよ!!まだ成人もしてないんだよ?……言いたいことなにも言えてないよ……こんなの……あんまりじゃねぇか……頼むから……目開けろよ……父さん……母さん¨」
気が狂いそうなくらい叫んで泣いた。
安置室が閉められるギリギリまで俺は両親にしがみついて離れなかった。
現実が信じられなくてどうしようもなく世界が冷たく感じた。
廊下に引きずり出された時、俺はとてつもない悲しみにかられて立てなかった。ドア一枚を挟んだ向こう側に両親がいるのに、どうして俺はここにいるんだろう。
どうして両親は冷たいのだろう……


「俺が部活で朝からいなかったとき、家で火事があったらしい。一軒家なんだけど、誰か通りすがりのスモーカーがタバコの吸殻を投げ捨てたら、偶然か知らねぇけど俺の家の庭に入ったらしい。それが、運悪く建物に近い植木に火がうったって。
父さんも仕事が休みの日だったから二人とも家で寝てたみたいで、火に気づかなくて逃げ遅れたって。
隣の家も出かけてて、消防車が呼ぶのにも遅くなって……俺の家全焼だった」
虚しくて、しゃべりながら気力を失ってるのが自分でもわかった。
家が燃える瞬間を想像してしまって、わけわからないくらい腹がたって仕方ない。
俺が部活に行っていなければ、変わっていたんだと思うと胸が痛かった。
きっと目の焦点とか合ってないんだろうな今の俺。
「もうな……逆に笑っちまうような話だろ?誰かのせいで、両親も家も思い出もなにかも全部奪われてさ……悔しくて吐きそうだ。犯人がわかんねぇからこの悔しさぶつけることも出来ないんだ。イライラとかもろもろが募るだけで……すげぇ悲しい。」
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