迷宮ラブトラップ
六月
「次の東京出張は少し時間があるから会わないか?」
そう遼也に言われて、旦那には友達と会うと行って時間を空けていた瑞香だったが、日にちが近くなってから予約が入ったからと、素っ気なく断られた。

久し振りに(実を言えば最初に泊まった時以来初だった)遼也とゆっくり逢えるのを楽しみにしていた瑞香は、がっかりした。
逢えないことももちろんだが、遼也がさらっと断って来たことも少なからずショックだった。

(遼也さんにとってはどっちでもいい事だったのかな)


それから東京出張の前日になって、予約がキャンセルになり、東京出張の途中で横浜の個展を見に行く予定だと遼也がブログに書いているのを見つける。

更に当日、
゛予定が入っていてお断りしていたけれど、でも行けるwこっそり行けるwなんでかいつも見に行けるんだよなw゛
なんて書かれているのを見付けたら、瑞香は堪らなくなった。

(私と会うのはあっさり無しにして、個展に行くのは機会を狙ってたって訳?)

悲しみに捕らわれて、夢中でメールを打った。




゛はじめから、私に会う気なんてなかったんじゃない゛




そしてそのまま遼也のラインをブロックした。


少しでも自分の悲しみに気付いて欲しかった。

本当に連絡する気があるなら、電話もメールも出来る。

けれどその日、遼也から連絡は来なかった。

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