春夏秋冬、ときめいて
案の定、ごりごりに歌って、音楽室から帰ってくると……


あたしの机の上に、英和辞典。


……大翔、もう来たんだ。


別に、いいんだけど。


いいんだけど、悲しい。


出来ることなら顔を見たかった。ついでに、軽口を叩き合うだけでもいいから話したかった。声を聞きたかった。


……だけど、そう思うのはあたしだけだから、こうやって義務的に貸したものが返ってきてるんだよね。


つらいなぁ。


誰かを好きになるって、難しい。


ちょっと泣きそうになりながら、あたしは辞書をしまいこんだ。




……これが、あたしが英和辞典に挟まった、大翔からのラブレターを見つける前の、話。


あたし達の夏が、始まる。






【完】
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