志ーこころー 【前編】─完─

ー土方sideー


蔵の扉を開けると、奥のほうに縛り上げた志乃と名乗る餓鬼の姿が見えた




綺麗な顔も、殴られて青あざだらけだった


……さすがに胸が痛む



鼻血がでているのに縛り上げたせいで、息ができないようだった



志乃「……カハッコホッコホッ……ッ……」



腫れ塞がった重いまぶたで、こんなにボロボロなのに


こちらを睨んでいる


その目は傷ついてはいるものの、なおも体中で威嚇し続けている







目が合った




少ししか空いていない目だったが、その目は怒りでギラギラと燃えていた






志乃「……殺す……」





そう呟いたかと思うと、体中から発散されていた殺気と気力がフッと消えて、静かになった





まずい。手遅れになるかもしれない







俺は慌てて小さな体に駆け寄った












だいぶ衰弱している




4日も飲まず食わずでここまでピンピンしていられるのも奇跡、といったところか








近くで顔を見ると、まだほんの12、13の幼子のように見える……






最初から長州の間者ではないような気がしていた






でもあの総司がやられるなんて……その辺のチビではないことは確かなはず。










……しかし……








総司の言っていた、家に帰せは一体……







もしかしたら売られたのだろうか……








そして酷い仕打ちに耐えられなくなった……













先ほど聞いた総司の話によれば、平助と戦っている時に、しきりに家に返せとわめき散らしていた、……とのことだった











もしかしたら、という思いの元ここの蔵に入ってきたのだが……










当の本人がこんなんじゃ話を聞こうにも聞けない












……それに、今は命が危ない









もしも間者だったとはいえ、まだまだ子供











良心が痛まない訳が無い










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