志ーこころー 【前編】─完─
ー土方sideー
志乃に殴られた痣(あざ)を濡らした手ぬぐいで冷やしながら、稽古をつけおわってから物思いにふけていた
それは半刻ほど前のこと
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山崎「……土方さんッ!!!!!」
血相変えて山崎が駆けてきた
このいつもは物静かで温厚な男がこんなに慌てるなんて、滅多にない
山崎の慌てように、ただならぬ事を察した
土方「どうした」
山崎「……ッ……志乃がッ……。脱走しましたッ……」
脱走……
嫌に頭の中で繰り返される言葉
山崎が何か言っているが、頭に言葉として入ってこない
嘘だろ……
あの志乃が……?
仲間ができた、とか
本当に、最近のあいつは変わっていった
最初に比べると随分と感情が豊かになってきている
無表情なのは変わらないけれど、決して以前のような一歩距離を置いたようなよそよそしい態度ではなかった
そのことに関して、志乃本人よりも嬉しく感じたのは他でもない”俺ら”だ