中距離恋愛
そして植田さんは、そのまま俺に話題を振った。

「そういえば早瀬先輩の会社って、F鉄工業でしたよね?」
「…そうだけど?」
「私、来月から管理栄養士として行くことになりましたので、よろしくお願いします」
笑顔で言う彼女。
夏帆に職場が変わることを話してなかったのだろう…一生懸命に説明している。
夏帆も納得したようで、それから俺と植田さんはF鉄工業の話をした。
高校の同級生や先輩や、後輩の話。

その時、不意に出た名前に夏帆が反応した。

『藤本晴香』
俺の1つ上の先輩。
俺と夏帆が別れる原因になった女性だ。

夏帆を見ると、さっきまで笑顔がない。
隣の植田さんも気づいたのだろう。夏帆に話し掛ける。

「…夏帆。どうした?
意識飛んでるよ!」
「…ん。ごめん、大丈夫だよ」
作り笑いで答える夏帆。
夏帆にそんな顔をさせたくない。
しょうがない…
ちょっと剛を煽ってやろうか…
俺は夏帆に話し掛けた。

「…どうした?
今頃、俺と付き合っていたこと、思い出した?
…剛と付き合ったら、いつかは俺と会うこともあるって、分かっている よね?」

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