CHECKMATE


「恋人と言っても、仕事中は任務に専念するから気にしなくていいし。常に俺と行動を共にするから、俺が出来るだけフォローするよ」
「…………宜しくお願いします」
「いや、俺の方こそ、変に気を遣わせて悪いな」
「いえ……」

優しく微笑む千葉に何て返答していいのか困り、夏桜はお茶を淹れにキッチンへと立った。

その間にテーブルの上を片付け始める千葉。
食器同士の擦れあう音が室内に響く。

湯飲み茶わんを手にしてダイニングに戻った夏桜に、

「奴らの前で呼ぶの、“夏桜”じゃ嫌か?」
「え?」
「仕事中は“東”でいい気がするんだが、奴らが彼女を大事にしろって煩くて」
「ハハッ、私“彼女”確定なんですね」
「……あぁ」
「別に構いませんよ、名前なんて何でも。剣持さんは“夏桜さん”って呼んでくれてますし」
「………そうだな。じゃあ、明日から“夏桜”って呼ぶな」
「別に明日からじゃなくても、今からでも気にしませんから」

律儀すぎる千葉に対して、夏桜は笑みが零れた。
出会いが最悪だったからなのか、変に壁を作っていた気がする。

けれど、日を追う毎に千葉の誠実さは嫌というほど伝わっている夏桜であった。

「じゃあ、私は何て呼べばいいですか?」
「好きなように呼べばいいだろ」
「………一輝さん?それとも、カズくん?」
「フッ、この歳で“カズくん”はねぇだろ」
「じゃあ、“一輝”でもいいの?」
「あぁ、別に構わない」
「…………じゃあ、一輝と呼ばせて頂きます」
「あぁ。宜しくな」
「こちらこそ」

お互いに何とも言えない空気を纏いながらお茶を口にした。

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