CHECKMATE


「1人で寝れそうか?」
「…………」

千葉の問い掛けに夏桜は小さく首を横に振った。
そんな夏桜の頭を軽く撫でて、

「俺が傍にいてやるから、心配すんな」
「…………」

俯き加減の夏桜はほんの少し顔を持ち上げ、小さく頷いた。
一旦夏桜の部屋に行き着替えや食糧などを手にして、千葉の部屋へ。
千葉が倉賀野と剣持からの報告を電話で受けている間に、夏桜はお風呂を済ませた。

そして、千葉がお風呂に入っている間に、とり損ねた夕食のような、少し早い朝食のような……そんな食事を作っていた。

けれど、迫りくる恐怖と押し潰されそうな不安で、包丁を持つ手も震え出す始末。
仕方なく包丁をまな板の上に置き、夏桜は両手を握りしめていると、

「おいっ、切ったのか?」

首にタオルを掛けた状態の千葉が駆け寄って来た。

「手は………切って、ませんっ」

夏桜は震えが止まらない手を必死に隠そうと胸元に押し当てた。
すると、そんな夏桜の行動から察して、千葉は長い腕で彼女を抱き締めた。

「大丈夫だ、俺がいるから」

千葉は優しい声音で何度も囁く。
こうして抱きしめられたのは何回目だろう?と考えながら、徐々に気持ちを落ち着かせる夏桜。

不安になっても仕方がない。
この命がある限り、どこまでも追われる身なのだから。

「もう大丈夫」

夏桜は歪んだ笑顔で千葉を見上げた。

「俺も手伝うよ」
「………ん」

その後、2人でキッチンに立ち食事を作った。

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