CHECKMATE
千葉はチラッと夏桜に視線を向けたが、意を決して医師を真っすぐ見据えた。
「こちらが千葉さんの検査結果ですね。量、濃度、総数、白血球数………共に正常値ですね。それから、前進運動率は76%、総運動率は………89%なので、至って正常値ですね」
「89%で正常なんですか?」
千葉は無意識に聞き返していた。
潜入捜査で来ていることも、形だけの検査だという事も忘れて。
医師はオレンジ色のマーカーペンで数値の所に記しを付け、ニコッと笑みを浮かべた。
「総運動率は40%以上で自然妊娠できるとWHOで認められている数値です。なので、89%なら十分問題ないですよ。……良かったですね。これで、安心出来たのではないですか?」
「あ、………はい」
検査結果の用紙を手にした千葉は、胸を撫で下ろすように大きく息を吐いた。
これまで仕事で嫌というほど緊張した経験があったのに、そんな経験は全く役に立たなかった。
安堵した千葉はゆっくりと隣に座る夏桜に視線を向けると、夏桜は優しい表情で小さく頷いた。
「では、次は奥さんの方ですが、少~しプロラクチンの数値が高いんですよね~。薬は服用されてますか?」
「……はい」
「それほど神経質になるほど高くはないので、ご主人、ご安心下さいね~」
医師は千葉に対して柔和な表情を浮かべた。
夏桜は診察の度に採血検査をしており、医師からプロラクチンの数値が高いことを告げられていた。
だが、そんなことは検査を受ける前から把握していた夏桜。
勿論、どんな症状で、どういう薬が処方されるという事も。
実はプロラクチン血中濃度が異常に高かった夏桜。
事前に数値を下げる為に薬を飲み始めていたのである。