CHECKMATE
腕時計で時間を確認した千葉。
現在の時刻、8時45分。
店らしい店も開いてない時間帯だし、こんな早朝から映画を観るのも如何なものかと……。
悩んだ挙句、千葉は夏桜の手首を掴んだ。
「どこに向かってるの?」
殆ど会話らしい会話も無く、千葉は車を走らせていた。
1時間半ほどで着いた先は………。
「えっ、えっ、えっ?!私、乗れないよ?乗ったこと1度も無いし!」
普段はクールな表情をあまり崩さない夏桜が、この時ばかりは大パニックを起こした。
「大丈夫、俺が教えてやるから」
「えええええっ、でもでもでもでもっ!!」
両手を顔の前でブンブンと振る夏桜。
幼い子供がジェットコースターを目の前にして、全身で恐怖を感じ拒絶しているかのように。
そんな夏桜が可愛いと思えた千葉は、彼女の腰に手を回し、楽しそうに耳元に囁く。
「いい気分転換になるから」
そんな千葉にキッと睨みを利かせるが、お構いなしの千葉。
鼻歌まじりにズンズンと歩み進めた。
高速に入る前に連絡を入れておいた千葉は、フロントに声を掛け、顔馴染みのスタッフと会話しながら敷地内を軽やかな足取りで進む。
そんな2人に溜息まじりに付いていく夏桜は、何とかして断れないものかと理由を探していた。
勉強であれば、右に出る者はいない夏桜であるが、こういう事には縁がない。
人間、経験の無いものには無条件で脳が反応するものだ!と心の中で自分自身に言い聞かせた。
大丈夫、一度経験さえすれば、何とかなるものよ………と。
「ッ?!
俯き加減で歩いていた夏桜は、千葉が立ち止まっていた事に気が付かなかった。
千葉の胸に頭を軽くぶつけ停止した夏桜。
ハッとして視線を持ち上げると。