CHECKMATE
そこには、絵本から飛び出して来たような真っ白な馬が……。
「綺麗……」
思わず心の声が漏れ出す。
見惚れるように目を奪われている夏桜の耳元に囁き掛ける。
「乗ってみるか?」
「うん。あっ……」
悪魔のささやきかのように、思わず『うん』と言ってしまった夏桜。
慌てて口元を押さえてみたものの、時すでに遅し。
千葉はニヤリと不敵な笑みを浮かべながら、スタッフにアイコンタクトを取った。
すると、放心状態の夏桜の前に立ち、営業スマイルを振りまく男。
「調教師の井上です。宜しくお願いします」
「…………宜しく………お願いします」
千葉にまんまと操られてしまった夏桜は、渋々頭を下げた。
「では、まずは着替えましょう!」
「…………はい」
溜息が駄々漏れ状態の夏桜は、千葉にギロッと睨みを利かせ、井上の後を追った。
「フフッ、あれで怒ってるつもりか?」
新たな夏桜の一面を垣間見た千葉は、楽しそうにしながら自分も着替えに向かった。
格好だけは一人前。
いかにも、特技は乗馬です!というようなスタイル。
だが、初心者も初心者、ド素人の夏桜は、白馬を目の前に足が竦んでいた。
「この子は、スノー。とても大人しい男の子です。……触ってみて下さい」
「えっ?!」
調教師の井上がしっかりと手綱を手にしているが、いきなり触れと言われても……。
済んだ瞳をしているスノーを疑っている訳ではないが、どうにも腰まで引けて来た。
「えっと、………その………」
2メートルほど離れたところから一歩も動くことが出来ずにいると。