CHECKMATE
翌朝、夏桜はリビングに緊張した面持ちで現れた。
「大丈夫か?顔色が悪いぞ?」
「………ん」
いつもならすぐさま洗顔しに行く夏桜だが、今朝はウォーターサーバーの冷水を口にした。
千葉はそんな彼女をじっと見据えていると、リビングテーブルの上に置いてある携帯がブブブブッと震えた。
「顔を洗って来るね」
「おっ、……おぅ」
夏桜が洗面所に向かって行ったのを確認し、携帯を手にする。
ディスプレイには『倉賀野 メール受信1件』と表示されている。
「何だ?こんな朝早くから……」
すぐさまメールを確認した千葉は、一驚した。
開いた口が塞がらず、その場に立ち尽くしていると、
「どうかしたの?」
「ッ?!………いや、何でもない」
背後から夏桜の声がし、千葉は慌てて携帯をポケットにしまった。
「珈琲飲むよな?」
「ん………、今朝はハムエッグでいいよね?」
「おぅ」
少しぎこちない2人。
何とも言えない空気が2人の間に漂っていた。
普段もさして会話が豊富な訳ではないが、今朝はいつもにも増して口数が少ない。
緊迫感があるという訳ではないが、何故か2人とも言葉を選んでいるようであった。
今朝は、マンション入り口に剣持を呼び寄せた千葉。
夏桜が婦人科の診察を受けるにあたって、送迎を剣持に頼んだのだ。
「頼むな、猛」
「任せて下さい」
「大丈夫だってば、子供じゃないんだから」
「フッ、緊張して青ざめてるヤツが何言ってんだか」
「っ………、煩いっ!」
「じゃあ、安全運転でな?」
「了~解」
2人を乗せた車は軽やかに発進し、婦人科へと向かって行った。
そして、千葉もまたその場を後にする。