CHECKMATE
婦人科の駐車場に停車した高級なクロスオーバーSUV。
その車の後部座席から夏桜が姿を現した。
「本当に一人で大丈夫ですか?待合室で待ってますよ」
「大丈夫よ。本当に2人とも心配性なんだから」
「ですが………」
千葉から『くれぐれも頼むな』と念を押されている為、傍にいるのがベストだと思っていた剣持。
だが、夏桜はさすがに剣持が同行するのは気が引けてしまうというか、恥ずかしさが勝ってしまう状況で……。
夫でも恋人でもないのに、待たせる訳にはいかないと思ったのだ。
ただの同僚。
そう考えると、千葉も同じ類なのに、何故か剣持と同じ感情にはならない夏桜。
恐らくそれは、『同居』という大きな違いがそう思わせるのかもしれない。
夏桜は必死に笑顔を張り付けた。
「終わったら合流すればいいのよね?」
「あ、はい」
「じゃあ、行って来ます」
「………何かあったらすぐ連絡入れて下さいねっ!」
病院の入口へと歩き出した夏桜は振り返ることもせず、右手をひらひらと振って合図した。
そんな夏桜を見据え。剣持は髪を搔き乱していた。
「一輝さんに何て言おう。はぁ………」
盛大な溜息を零しながら、剣持は向かいのビルの地下駐車場へと。
***
「遅くなってすまない」
「いえ、自分の方こそ朝早くにお呼び立てしてすみません」
「それは構わないんだが………」
マンションから車で10分ほど離れた場所にあるカフェベーカリー。
朝7時からオープンしている為、出勤前のOLやサラリーマンの姿が目立つ。
そんな店内のカフェエリアに、既に倉賀野の姿があった。
「お待たせ致しました」
「班長、珈琲で良かったですよね?」
「ん」
「ごゆっくりどうぞ」
先に到着していた倉賀野は、珈琲を2人分注文していた。
そして、無言でカップに口を付けた2人。
店内に心地よいBGMが流れている中、店員が離れたのを見計らって千葉が重い口を開いた。