CHECKMATE


いつもより入念にエコーされているのが、手に取るように分かる。
そして、医師が溜息を零したのが、カーテン越しに夏桜まで聞こえて来た。
スーッとプローブが引き抜かれると、検診台の足部分が自動で閉脚する。

「お支度を整えて、隣の診察室へお願いします」
「…………はい」

スライド式のドアを開け、隣の診察室に入ると、医師はエコー写真を数枚並べた状態で待ち構えていた。

「千葉さん」
「……はい」
「これを見て下さい」

医師は夏桜の卵巣のエコー写真を手渡した。

「これが千葉さんの卵巣なんですが、腹水がかなり多いんですよね」
「…………はい」
「排卵誘発剤を使用すると、腹水になる人は少なくないんですが………」

医師が指差す先にある自分の卵巣の状態を見て、夏桜は言葉を失った。

結構な痛みがあったのだから、当然腹水があるのは承知していた。
けれど、まさか…………。

「ここに小さい卵が幾つかあるのが分かりますよね?」
「…………はい」
「これが、千葉さんの卵子なんですが………、状態があまりよくありません」

医師は落胆した表情で口にした。
医師免許を持つ夏桜。
医師が説明しなくとも状況が飲み込めていた。

夏桜の卵巣の状態は、かなり悪い状態である。
かなり広範囲に渡って腹水があり、右の卵巣に卵子が5つ、左の卵巣に卵子が6つ確認出来たが、そのどれもがとても小さく、殆ど成長していなかった。

数日前の診察の時とほぼ同じ大きさだ。
更に、卵子の輪郭がはっきりしておらず、鶏卵に例えるなら、殻ではなく、卵膜の状態という感じだ。

これでは到底採卵など出来ない。
仮に採卵したとしても、授精出来るような元気な卵子は1つも無いだろう。

医師は椅子に座り直すと、丁寧な口調で診断を下した。

「とても残念なのですが、次の周期にまた頑張りましょう」

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