CHECKMATE
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病院を出た夏桜は空を見上げた。
いかにも初夏らしく澄みわたる青空。
ほんの1時間ほど前までは心が落ち着かなかったが、結果的には良かったと思えた。
持病の分泌過剰を何とか上手く誤魔化そうと頑張ってはみたが、結局短期間では正常な値にすることが出来なかったのだ。
それだけ、夏桜の卵巣の状態は悪い。
だから夏桜は、子供を授かるということも、結婚ということですら諦めているのだ。
自分が『医師』なだけに、何物にも代えられぬ現実だと知っているから。
日光浴でもするかのように両手を広げて胸いっぱい空気を吸い込むと、カーディガンのポケットに入ってる携帯電話が鳴った。
「………はい」
『もう終わったのか?』
「ん」
『お疲れさん』
「今から合流するね?」
『おぅ』
電話の主は千葉。
相向かいのビルから、婦人科を張り込んでいる。
夏桜が病院から出て来たことも、一部始終見ていたであろう。
夏桜は千葉の声を聴いて、漸く安堵したのであった。
***
剣持、水島、神保はクラブ関連と仙堂の動向を調べに出ていてる。
三國は科警研からの要請があり、今日一日不在。
婦人科の目の前にあるビルの4階に夏桜が到着すると、いたのは千葉と倉賀野の2人だけ。
倉賀野は前日に仕掛けた最新式の超小型カメラの画像確認をしながら、クラブに出入りしているキュア製薬の社員の特定をする為、画像解析をしていた。
そんな倉賀野の邪魔をしないように、千葉は夏桜にアイコンタクトを取る。
非常階段へと移動した2人。
千葉は腕組みしながら壁によりかかった。
「病院はどうだった?」
サラッと聞く割には、表情はいつにも増して険しい。
それが、彼なりの優しさだと知っている夏桜は、嬉しくて思わずクスっと笑ってしまった。