CHECKMATE
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「千葉さん、千葉夏桜さん、1番診察へお入り下さい」
待合室に看護師の声が響き渡る。
夏桜は大きく深呼吸して腰を上げた。
まだ診療時間前という事もあり、待合室にいるのは夏桜の他に一組の夫婦がいるのみ。
通常採卵するのは診療時間前で、朝6時から8時頃に行う病院が多い。
千葉には内緒にしていたが、今日、夏桜は採卵することになっている。
体外授精や顕微授精のような高度生殖医療に関して知識のない千葉に、無意味に心配を掛けさせまいと、夏桜は黙っていたのだ。
通常採卵は麻酔を使っての手術になる為、配偶者の同意書が必要だが、夏桜は筆跡を変え勝手に記入していた。
緊張した面持ちで診察室の扉をくぐる。
看護師に促され、下半身の衣服を脱いで検診台(内診台)に乗る。
すると、カーテン越しに人の気配を感じた。
「さぁ~、どうかなぁ~?」
「っ……、おはようございます」
「おはようございます。昨夜はしっかり休めましたか~?」
「…………はい」
夏桜は天井をじっと見つめながら返答した。
カーテン越しの医師の声はとても明るく、夏桜とは正反対。
今から楽しい事でもあるのかというくらい、医師の声は弾んでいた。
「少し冷たいですよ~」
「………はい」
何度経験してもあまりいいものではない。
冷たいゼリーを纏ったプローブの感覚が夏桜を襲う。
細く長い息を吐くと……。
「ん?………あれ?………おかしいわね」
卵巣の状態を確認した医師は、急に声のトーンを落とした。
しかも、焦るような素振りを見せる。
「千葉さん?………ちゃんと薬を飲んでました?」
「あっ、………はい」
「おかしいわね」
「っ………」
医師は必死にプローブを動かす。
それは、少し乱暴とも思える手つきで……。