CHECKMATE
「大丈夫よっ」
千葉の手を軽く払いのけるように上げた手を素早く掴まれてしまう。
「そうやって強がる時は、大丈夫じゃないだろ」
「っ………」
ぎゅっと握られた手。
触れる部分がカーッと熱を帯びる。
それだけじゃない。
心の奥まで見透かしそうな瞳が、じっと夏桜を射抜く。
「俺の目を見ろ」
2人きりならまだしも、同じ部屋に倉賀野もいる。
夏桜は動揺して視線を逸らしてしまった。
すると、千葉は夏桜の手を掴んだまま部屋の外へと……。
「ちょっと離してよっ、痛いってばッ」
無言のまま強引に歩かされる。
少し苛立った様子の千葉。
別に怒られるようなことをした訳じゃないのに……と思う夏桜は必死に千葉の手を振り切ろうとすると、
「んッ!」
強い力で体が引き寄せられたと思った次の瞬間に、ドンッと鈍い痛みが背中を襲った。
「いい加減にしろ」
「っ……」
「本気で俺を怒らせたいのか?」
非常階段手前の壁に貼り付けれるように拘束された。
しかも、凄みのある視線が真っすぐ夏桜を捕らえている。
別に怒らせたい訳じゃない。
脳が勝手に暴走して自動変換してしまうから、必死に理性を保って制御してるってのに。
こんな風にされたら脳が勝手に勘違いする。
夏桜は自分の気持ちを誤魔化すようにキッと睨みつける。
揺れる想いを反抗することで正当化しているみたいに……。
すると、憐れむような切ない瞳に変わった千葉。
漏れ出した溜息が夏桜の頬にかかる。
心から心配してくれていることには感謝してるが、夏桜が望んだことではない。
千葉の優しい性格が分かるだけに、夏桜の心は揺れていた。
必死に自分自身に言い聞かせようと試みるも、夏桜の決意をいとも簡単に揉み消してしまうように、じりじりと整ったフェイスが迫って来る。
ゆっくりと覆い被さるように追い詰めた千葉は、夏桜の耳元に囁いた。
「一生懸命なのは分かるが、事件は一人で解決出来るもんじゃない。それと、お前の命には、チーム全員の命がかかってる事を忘れるな」