CHECKMATE
数学や化学の計算式は決して逃げたりしない。
自分が逃げない限り、そこに正解は必ずある。
どんなに時間がかかっても、正解は揺るぎないものなのに。
恋とは違うものだと知ったのは、それから何年も経ってから。
正解にならないと気が済まない私は、次第に彼を追い詰めていた。
そんなことをしている自覚は勿論なくて、執拗に迫っていた私の前から彼は突然消えた。
そして、それから半年ほど経ったある日。
唯一仲の良かった友達でさえ、私の前から姿を消した。
ううん、多分違う。
私が仲が良いと思っているだけで、彼女からしたら嫌々付き合ってくれていたのかもしれない。
いつしか周りの私に対する視線も変わり、『同級生』から『変わり者』、『変わり者』から『化け物』へと変わっていった。
興味を持つことがいけなかったのか。
正解を求めたのがいけなかったのか。
想いを行動に移したのがいけなかったのか。
本当はいけないことなんて無いのかもしれないが、それはきっと、『普通の人間』に与えられた権限であり、決して私が求めてはいけない事だった。
その後は必要最低限の会話に留め、両親でさえ心を開くことを私は放棄した。
決して自分からは求めてはいけない。
自分に課せられたことだけをこなせばいい。
そうして、この世に生を受けてしまった罰を償い続けなければ………。
カタカタとキーボードを打つ音が響く中、夏桜は気持ちを落ち着かせようとブラウスの胸元部分をぎゅっと掴んだ、その時!
「大丈夫か?」
「ッ?!」
額に温かいぬくもりを感じた。