CHECKMATE
「今日は電源を切るなよ?」
「分かってるって」
翌日、テナントビルの地下駐車場に止めた車から降りた2人。
前日のこともあって、千葉は夏桜に釘をさす。
夏桜はお気に入りのトートバッグを持ち上げ、小刻みに振って見せた。
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夏桜はいつも通りに受付に診察券を出し、予約票の注射希望欄に記名する。
無意識にジョアンの名前を探すのだが、おかしい。
今日はジョアンの名前が希望欄に無い。
不思議に思いながら、待合室にいるジョアンの横に腰を下ろした。
「Examination?(診察)」
「Yes.」
ジョアンは手にしている雑誌を片付け、夏桜に愛らしい笑みを向けた。
ジョアンは卵子や子宮の状態がいいらしく、排卵日も近いため、調整しているという。
不妊治療しているとよくあることだ。
夏桜のようにホルモン注射をしていても、中々状態が改善されない人もいれば、思っていた以上に過剰に反応するタイプの人もいる。
ジョアンは若いということもあり、子宮や卵巣の状態もいいのだろう。
そもそもジョアンは、不妊症ではないだろう。
だから、無意味なホルモン注射を受けなくてもいいのだから。
他愛ない会話をしていると、ジョアンが看護師に呼ばれた。
診察室へと向かうジョアンに軽く手を振ると、夏桜の携帯がブブブッと震えた。
心配性の千葉がメールを送って来たと思い、夏桜はカーディガンのポケットからスマホを取り出した。
すると、『非通知 メール1件』と表示されている。
「ん?………あっ」
真希先輩からのメールだと思った夏桜は、疑うことなくフリックしロックを解除した次の瞬間、全身が凍り付いた。