CHECKMATE
「のんびり外出も出来ないし、息が詰まるだろ」
「…………はい」
「だから、今日くらいは羽を伸ばせ」
「………」
「とはいえ、俺がいたら羽も伸ばせないか」
千葉は夏桜にグラスを差し出し、
「誕生日、おめでとう」
「…………ありがとうございます」
千葉は、ほんの少し照れる夏桜の頭をポンポンと優しく撫で、柔らかい笑みを浮かべた。
「千葉さんって、意外と優しいんですね」
「『意外』は余計だ。俺はいつだって、優しいぞ?」
「フフッ」
「そうそう。誕生日くらい、笑顔でいろ」
「………はい」
夏桜の誕生日を知っていた千葉は、密かにお祝いをしようと思っていた。
孤独な運命を生きる彼女に、少しでも明るい笑顔になって欲しくて。
マンションではお隣同士であっても行き来する仲では無いし、勿論、誕生日だからと食事に誘うほど気を許した仲でも無い。
だから、千葉は仕事の一環として、現場の下見に訪れる事を今回の口実に付け合せたのである。
そんな千葉の優しさをほんの少し垣間見た夏桜であった。