CHECKMATE
「もう大丈夫です」
乱れた襟元を直すように指先を這わす夏桜。
そんな彼女を見て、千葉は小さな溜息を吐いた。
不調だという事は明らかなのに、それを断固として認めようとしない。
最初は他人に迷惑を掛けたくないのかと思った千葉だが、夏桜が抱えている過去がそれを打ち消した。
恐らく、毒を煽った後遺症に因るものだろう。
千葉は、そんな夏桜の前髪にそっと指先を滑らせ、横に流しながら……。
「辛くなったら、いつでも言え。お前を守るのが俺の仕事だ」
「……………はい。ご迷惑をお掛けして、すみません」
夏桜は、整えたばかりの胸元をギュッと掴み、弱々しい声を漏らした。
そんな彼女の肩をポンと叩き、
「そろそろ時間だ。準備をして待機しろ」
「……はい」
寝室に夏桜を残し、千葉は剣持達のもとに戻った。
―――――17時、エトワールホテル1Fのロビーラウンジ。
プレシャスなひとときを奏でる、心地良い音色。
日頃の疲れを癒し、想い出の1ページを彩る贅沢な時間を演出するように、清流のような淑やかな音色が流れている。
そのラウンジの中に溶け込むように、フタッフになりすました倉賀野がスタンバイしていた。