ある男子高校生の恋愛事情【三井編】
「絶対ね」
「ん」
「絶対だよ」
「ん」
「………絶対だよ?」
「しつこい。分かったから、寝ろ」
「…おやすみ」
「ああ」
――ん?
ちょっと待て
「なんだ、この手は」
芽衣子の両手が俺の腕をガッチリとホールドしてる
「逃げそうだから」
「俺、信用されてねえ…」
「今日だけ、ずっとコレね?」
「分かったよ」
はあ…
別に
コイツの家庭事情に同情したワケじゃない
だって、そんな家たくさんあるだろ
コイツの父親の代わりになるつもりもない
飯が欲しくて枕代わりになったワケでもない
放っておいたって別に自殺なんかしないだろう
そこまで弱いヤツだとは思えないし
でも
それでも
置いていったらダメだとは思った
だからといって
“じゃあなぜだ?”と聞かれても答えられないのだけれど