泣きたい夜には…~Shingo~



今、俺が院長の娘と会ってしまったらそれこそ院長の思うツボだ。


口にこそ出さなかったが、向井先生だってこのパターンだったに違いない。


それだけは絶対回避したい。


1週間なんて考えるまでもない。


俺の気持ちはただひとつ、


この先もひとみと一緒にいたい。


それだけだった。




そして、1週間後の金曜日。


院長との約束の時間が近づいてきた。


仕事を終えた俺は、決意の証をジャケットにしのばせ、車に乗った。


院長に最後の返事をした後、帰国したひとみに会いに行く。


俺にとって、今日この日が人生最大のヤマ場。


いつも運転し慣れている道だというのに、緊張のせいかハンドルを握る手にも力が入る。


大丈夫、きっとうまくいく。


いつもだったら会社から病院まであっという間の距離なのに、何故か今日は遠くに感じられた。


大丈夫、


絶対大丈夫!


しっかりしろ、慎吾!


ハンドルを握り直すとスピードを上げた。



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