泣きたい夜には…~Shingo~



「兄は現役で一流医大に入って、医師国家試験に合格した。もう将来は約束されていたのに」


ひとみは体を震わせ、言葉を詰まらせた。


「ひとみ…もういい…」


ひとみの肩を抱き、話を止めさせようとした。


だが、ひとみは首を振って、


「大丈夫だから」


そう言うと、俺の手を握り、まっすぐ俺を見た。


「兄は、私が高校2年の時、高校生の無免許運転のバイクにはねられて亡くなったの。

明日から研修医としての勤務が始まる…そんな矢先のことだった。私達家族は一瞬にして失意のどん底に落とされてしまった」


ひとみは悲しみをこらえようと唇をかんだ。



.
< 77 / 156 >

この作品をシェア

pagetop