泣きたい夜には…~Shingo~



「あの、私に何か」


用件は新薬についてなんかじゃないことはわかっている。


恐らく…


「コーヒーでいい?それともお茶にする?」


穏やかな口調の向井先生に対し、


「いえ、けっこうです。それよりご用件は何でしょうか?」


ゆっくりお茶を飲みながら談笑するような雰囲気でもない。


今の俺にはそんな余裕なんてひとかけらもなかった。


先生は苦笑すると、

「ひとみ…いや、浅倉くんのことでキミに聞きたいことがある」


ドクンッ!心臓が音を立てて大きく動いた。


やっぱり…


「浅倉先生がどうしたんですか?」


そ知らぬ顔で聞いてみたが、先生はプッと噴き出し、


「とぼけてもムダだよ。キミとひとみが付き合っていることは知っている。スーパーで何度も見かけているし、この間だってキミが私を睨んでいたのはわかっていたよ」



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