夢のような恋だった


 再び不審な電話がかかってきたのは、それから二日後だ。

私はディスプレイを見た途端、体が硬直した。
表示された名前が、草太くんだったからだ。


「も、もしもし」


自然に震えてしまう声。
対して、電波の向こうの草太くんの声は低かった。


『……なんで、着信拒否した?』


背筋からゾクゾクと冷たい何かが這い上がる。

草太くんの名前でかかってきたものを、着信拒否なんてしていない。
だとすれば、あの非通知電話は。


「草太くんだったの?」

『紗優のせいだよ』

「何がよ」

『紗優のせいで、俺の人生おかしくなってる』


意味がわからない。
話に脈絡がなさすぎるよ。
人一人から振られたくらいで、人生までおかしくはならないでしょう?

でも今の草太くんは今までとはなにか違う。

以前は飄々として何かに執着することがないって感じだったはずなのに。
今は酷く執着を感じる。特に、私や茂くんに。


『紗優が、俺が茂にこだわってるなんていうから』

「意味わからないよ、草太くん。私達別れたんでしょう。変な電話してこないで」

『別れてなんかない』


思わず息を飲んだ。
言っている意味がわからない。


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