夢のような恋だった



【こんばんは。 今何してますか?】



帰りがけ、普通を装って智くんにメールをした。

一言でもいいから、彼の声が聞きたくて。
でも、いきなり電話をするのはなんとなくハードルが高いので消極策だ。


家に帰り着くまでに返事は来ず、私はため息を付きながら夕食の準備をする。

とはいっても一人だとがっちり作るのは億劫なので、スーパーのお惣菜コーナーで買ってきた焼き魚に、おひたしとお味噌汁だけの簡単なものだけど。


ご飯が炊けて食べ始めようとした時、沈黙を守っていた携帯が鳴った。


【ごめん。まだ仕事中。何かあった?】


見た瞬間に、浮き上がった気持ちが下降していく。

贅沢になってる。
こんな風に話せるだけで十分だって思わなきゃいけないのに、今すぐ話せないことにこんなに落ち込むなんて。


ゲーム会社の人は夜型が多いのだろうから、きっとまだまだ仕事は終わらないだろう。


【なんでもない。進捗どうなったのかなって思って。頑張ってね】


私と智くんをつないでくれているお仕事だ。頑張って欲しい。
ただ会いたいだけで邪魔しちゃいけない。


【豚のミニゲーム作ってる。頑張るよ】

「ふふ」


自然に笑ってしまった。
営業スマイル以外で、今日初めてちゃんと笑ったかも。

他愛のないメールだったけれど、心に明かりが灯ったみたいな気持ちになった。


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