夢のような恋だった
「やめろよ」
聞き覚えがある、……ような気がする。でもサイちゃんのものじゃない。
「なんだよお前」
「誰でもいいだろ。アンタ彼女と別れたんだろ? 何未練たらしく乗り込んできてんだよ」
「そっちこそ紗優のなんだよ」
「それは、……まあ知り合いだけど」
「その程度の男が口出すなよ」
ゴン、と何かがぶつかり合う音がした。
状況が見えないことも不安で怖くて。
開けたらいけないと思いつつ、チェーンをかけたままそっとドアを開ける。
狭い隙間からはよく見えない。
でも、男の人二人が体を押し合いながら廊下で悶着しているのは分かった。
どうやら度々聞こえる鈍い音は、廊下の壁にぶつかる音らしい。
草太くんが腕を振り上げて、もう一人の彼の頬を殴った。
その瞬間に見えた顔に目を疑う。
――智くんだ。
どうして?
彼には伝えていないのに。
「ってぇ」
智くんはよろめいて尻もちをつく。
私は咄嗟にチェーンを開けて飛び出した。
「智くん!」
「馬鹿、出てくるなよ」
「紗優、ようやく出てきたな」
二人が私を見つけて、正反対なことを言う。